『暖簾・花のれん』

船場、という土地の特異性をどれだけの人がご存知なんでしょう。。。
お恥ずかしながら私は、今の今まで"大阪の問屋街"というイメージ以上のものを抱いていませんでした。
なので、山崎豊子さんの処女作『暖簾』を呼んだときの衝撃は、もうがつーんというか、なんというか…。
ご存じない方の為にざっと言うと、暖簾は淡路島から船場にほぼ無一文で奉公に来た少年が、昆布問屋の店で修行し、独立(暖簾わけ)してからも色んな苦難に立ち向かって商いを大きくしていく、という話です。
まあ言うてみれば昔の大阪商人の話なんですが、なんといっても彼らの世界が凄い。
そもそも、船場って単なる問屋街じゃないんですよ。
商売人は商売人でも船場は富商の街で、ご主人は『旦那さん』、奥さんは『御寮人さん』、男の子は『ぼんぼん』、女の子は『お嬢はん(おいとはん)』って呼ばれるんです。
従業員も"番頭"、"手代"、"丁稚"の三種類に分かれていて、格に応じて名前まで変わるんですよ。
そんな街だから、当然商売は一見派手です。
必要とあらば金はばら撒くし、これはと思ったものは少々高かろうと即決で購入。
家の格を保つためにも着ているもの、持ち物にもこだわるし、当然お金もかける。
でも、だからといって贅沢してるわけではないんです。
彼らがお金をかけるのは、商売につながっているところだけ。
他はなにごとも『節約(しまつ)』がモットーなんです。


これを読んだ時、今の日本人に欠けているのはこの精神じゃないかしら、と思いました。
(日本人、なんてすごい大雑把なくくりをしてごめんなさい)
不況不況と言われていても、日本人は裕福です。
それでもみんな先行きが分からないから、どうしてもケチになってしまってます。
その気持ちはすごく分かる!…私も事実そうだから。
でも、この見通しが立たない時こそ、使うところには使うべきなんじゃないでしょうか。
お金だけじゃなく、時間とか情熱とか、そういったものを今こそ『これだ!』というものに注ぎ込むべきなんじゃないでしょうか。
そうじゃないとどんどん先細りしちゃうんじゃないかなー、とちょっと心配です。
どう思います?